のはら のぶこ
美術講師・アーティスト
宮城県石巻市在住。
色と言葉と絵を通して、自分らしさと出会う時間を届けています。
子どもの頃のこと
私は子どもの頃から絵を描くことが大好きでした。
けれど同時に、人と違うことに戸惑い、生きづらさを感じることもありました。
小学校時代の転校先では、周囲との違いを理由にいじめというしんどさで悩んだ時期もありました。
そんな経験から「自分らしさ」とは何だろう。
「人と違うこと」は悪いことなのだろうか。
そんな思いが、今も私の創作や教育の根っこにあります。
19歳の頃、カナダへ留学する前に出会ったレオ・バスカリア先生の著書『自分らしさを愛せますか?』は、今でも心の支えとなっています。
そして「自分らしさってなんだろう」とカナダの大学で学んでいるときに出会ったのが色彩心理学という学問でした。
色彩心理学は子どもの絵をベースに作られている学問で、色彩心理学、色彩生理学との出会いは、私の人生を大きく変えた瞬間でした。
カラープランナー時代
大学卒業後は、カラーデザイナーとして公共建造物や工業製品の色彩計画に携わりました。
工業製品等のデザインでは、グットデザイン特別賞、建設省の技術開発最優勝受賞。
色には人の気持ちや行動に影響を与える力があります。
その経験を通して、色は単なる装飾ではなく、人の心と深く結びついていることを学びました。
子どもアトリエの日々
子どもアトリエの日々
結婚・子育てを経て、我が子の描く絵を見ているうちに、学生時代に学んだ色彩心理学の教科書の内容がふと頭に浮かびました。
「子どもの絵には、その子の心が映し出される」
そんな思いから、子どもたちのためのアトリエを立ち上げ、10年間主宰することになりました。
不思議なことに、そのアトリエには素晴らしい仲間たちが集まってくれました。
ベテランのカウンセラー、抽象画を描く画家、立体制作を行う造形作家など、それぞれの分野で経験を積んだ方々です。
中でも、あるベテランカウンセラーの言葉は今でも忘れられません。
「人の心の問題の多くは、幼少期の親子関係の中でつくられる」
その方は平日は病院で働きながら、週末になるとアトリエへ足を運び、子どもたちだけでなく親御さんの話にも耳を傾けてくださいました。
アトリエは、子どもたちの心の解放の場であると同時に、親御さんが子育ての悩みや不安を安心して話せる場所でもありました。
毎週、多くの子どもたちと絵を描く中で、私は大切なことに気づきました。
それは、子どもたちは本来みな表現者だということです。
三歳の子どもでさえ、嬉しかったこと、悲しかったこと、怒ったこと、不安だったことを、絵を通して驚くほど豊かに語っていました。
子どもたちの絵から聞こえてくる言葉を親御さんと共有すると、親子の関係が少しずつ変わっていきます。
子どもへの理解が深まり、親御さんの心にもゆとりが生まれる。
その結果、親にとっても子どもにとっても、より自由で温かな時間が流れるようになりました。
そして大人が思う「上手」「下手」とは関係なく、子どもたちは一人ひとり、自分だけの豊かな世界を持っていたのです。
美術講師として
その後、中学校、高校を中心に美術講師として15年以上活動してきました。
これまで関わった子どもから大人までの人数は3000人を超えます。
その中で何度も耳にした言葉があります。
「私には絵心がないんです。」
「絵は苦手で……。」
けれど私は、本当に絵が描けない人にはまだ出会ったことがありません。
描けないのではなく、上手に描かなければならないと思い込んでいるだけなのかもしれません。
本を書こうと思った理由
長年、美術教育に携わる中で感じてきたことがあります。
今の社会では、アートが「上手に描くもの」として捉えられすぎているのではないか。
けれど本来、アートにはもっと別の力があります。
心をほどく力。
自分とつながり直す力。
言葉にならない感情に触れる力。
私はその力を、一人でも多くの人に届けたいと思っています。
現在は『心をほどくアート時間』の執筆を進めながら、作品制作や発信活動を続けています。
描くことは、自分を表現することではなく、自分と出会うことなのかもしれません。
この場所が、あなたにとって心をほどくアート時間になりますように。
略歴
・武蔵野美術大学卒業
・カラーデザイナーとして7年間勤務
・子どもアトリエ主宰(10年間)
・高校美術講師として15年以上勤務
・指導人数3000人以上
